2017/03/230 Shares

スーツを経費にする裏技(特定支出控除)が全く使えないたった1つの理由

理由:あなたは毎月6万円以上、スーツを買わない。

確定申告時期ですね。

この時期になると、サラリーマンの裏技として、「サラリーマンでもスーツが経費になる」という記事を見かけるのですが、ハッキリ言って、読むだけ時間のムダです。

なぜなら、この制度は全く使えないからです。

1/30000しか使われないレア制度

この裏技は、特定支出控除という名前で、利用者数は平成23年分が4人、平成24年分が6人というたった数人のための制度でした。

これが、平成24年度の税制改正で費用の範囲が拡大されて、平成25年分は1,600人、平成26年分は2,000人まで急増しました(平成27年分はデータを見つけられませんでした)。

日経新聞が「会社員の特定支出控除、利用者が急増 13年度260倍に」とか記事にして、260倍スゲーみたいに聞こえるかもしれませんが、もとが1ケタなんだから、なんにもすごくありません。

しかも増えた理由は、特定支出の対象に「資格取得費」が追加されたのが大きく、例えば税理士の資格を取るための専門学校への授業料(10万~60万円くらいします)を払った人たちが増えたからです。

なお、急増したと言っても、給与所得者(例:サラリーマンなどの会社員・公務員)は5,600万人以上だそうですので、使ったのは約3万人に1人です。

単純には比較できませんが、ふるさと納税の方がよっぽど身近でしょう。

サラリーマンに経費がない?

自営業と違って「サラリーマンはスーツすら経費にならない」とみんな怒っていますが、それは半分正しいのですが、半分は誤りです。

実は、サラリーマンで給料をもらっている方は、ちゃんと必要経費が認められています。

その必要経費の名前が「給与所得控除」です。

その計算方法は決まっていて、年収が分かれば答えが出ます。

給与収入(A) 給与所得控除
180万円以下 A×40%
最低65万円
360万円以下 A×30%+18万円
660万円以下 A×20%+540,000円
1000万円以下 A×10%+120万円
1500万円以下 A×5%+170万円
1500万円超 最高230万円
H27年は最高245万円

例えば、

年収400万円⇒134万円

年収500万円⇒154万円

年収600万円⇒174万円

となります。

年末調整で源泉徴収票をもらったら、ここを見てください。

支払金額(年収)
-給与所得控除後の金額(所得)
給与所得控除

となります。

給与所得控除は、かなり高い!

そして、この裏技(特定支出控除)は、この給与所得控除の金額の半分以上を使った時にはじめて使える制度です。

例えば年収500万円の人なら、給与所得控除は154万円です。

154万円÷2=77万円以上

という条件をクリアする必要があります。

このあたり、医療費控除の10万円というハードルにちょっと似てます。

では、年間で77万円以上、これを全部、スーツでクリアしようとしたらどうでしょうか?

最低でも月6万円以上使う必要があります。

スーツって、1着いくらですか?

1万円から3万円くらいのものを着ていませんか?

スーツは年間で何回買いますか?

1回? 2回? 3回?

年間に77万円以上、買いますか?

そもそも、年収500万円の人は、年間で77万円も経費を自腹で使ってますか?

もともと給与所得控除が高めに経費を見積もっているため、ちょっとやそっとじゃ実際の支払額が超えないのです。

※なお、正確には、別のルールがあって、スーツだけの場合は65万円までしか認められません。

スーツ代「以外」を合わせても厳しい現実

いやいやneronaさん、スーツ代だけではないでしょ。

1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)

2 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)

3 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)

4 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
※弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となります。

5 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)

6 次に掲げる支出(65万円が限度)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
(1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2) 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3) 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

も対象となります。

なんだかたくさんあるから何とかなりそうだ、と思うかもしれませんが、この中で金額的に大きいのは、弁護士・公認会計士・税理士の資格取得費です。

しかもこれらは、職務(仕事)に直接必要である場合に限られます。単に勉強してみようというだけでは使えません。

これらを組み合わせてようやく77万円に到達するか、全然届かない
というのが現実ではないでしょうか。

また、そもそも仕事に直接必要な「研修費」や「図書費」、「衣服費(いわゆる制服)」、「交際費等」というのは、本来、自腹を切るよりは、会社の経費にしてもらうのがまず考えるところでしょう。

「会社」というハードルがある

また、確定申告をするにあたり、給与等の支払者=会社の証明が必要です。

会社が仕事に必要な経費として、「証明書」を発行してもらわなければなりません。

例えば、「衣服費」は次のような書類を書いて、提出するのです(上が自分が書くところ、下が会社が書くところです)。

例えば、スーツは仕事で使うから認めてください、と言った時に、果たして会社はOKを出してくれるでしょうか?

う~ん。

微妙。

どうも雑誌記事なんかをさらっと読んで、医療費控除のように単に領収書を保存していれば使えると思っている方が多いです。

税務署に行ってはじめて使えないことを知った、なんて方もいるので、ご注意ください。

特定支出控除が使えても、戻ってくるのはこれだけ!?

さて、1番の落とし穴はこれなんですが、仮に、年収500万円の方が、給与所得控除154万円の半分である77万円を超えて経費を使ったとしましょう。

実際に、2000人は平成26年で使ったわけですよね。

例えば、80万円つかったとしましょう。

おお、結構がんばりましたね。

では、いくら節税になったのでしょうか?

80万円-77万円=3万円

これだけ余計にサラリーマンの経費になる部分です。

所得税と個人住民税を合わせた税率を約15%~20%くらいだとすると、

4500円~6000円くらいの節税です。

医療費控除も10万円を超えた部分に対して節税になるので似てますね。

また、100万円つかったととすると、23万円が余計にサラリーマンの経費になる部分です。

34500円~46000円くらいの節税です。

う~ん。

おそらく、経費になると思って使い過ぎてしまう分の方が、節税になる部分よりも多い気がします。

つまり、節税をしようと思って逆に支出を増やしてしまうという状況になるのが、1番の落とし穴です。

この制度はあくまで、やむをえず使わないといけない、でも、会社が経費にしてくれないものについて利用するもので、決して、「サラリーマンはスーツも経費になって節税ですよ」なんてどこかの雑誌記事に影響されて、「よし、じゃあ使うぞ!」という性質のものではない、ということです。

なお、使える人は、しっかり使いましょう!!

本当の節税は「給与所得控除」を使い倒すこと!

最後になりましたが、もう一度、給与所得控除の計算結果を見てください。

年収400万円⇒134万円
年収500万円⇒154万円
年収600万円⇒174万円

でしたね。

年収400万円の人の実際に支払った年間の経費が10万円だとしても、134万円だとしても、税金の計算上の経費は134万円になるのです。

重要なのは、経費をたくさん使っている人も、全く使っていない人も、年収が同じなら給与所得控除は同じ、という点です。

ということは、自腹で経費を使わなければ使わないほど、お得だということです。

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