個人事業者が倒産防止共済で節税できるかどうかは支払時と解約時の税率の差が重要【2021年版】

5 min

個人事業者と倒産防止共済

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、取引先が倒産したときに連鎖倒産を防ぐために、無担保で借り入れができる制度です。

掛金は月5,000円~月20万円で、最高800万円までかけることができます。

無担保・無保証人で掛金の10倍(最高8,000万円)まで借り入れができます。

しかし、実際には「節税目的」で利用されるのがほとんどでしょう。

 

倒産防止共済は、会社だけでなく「個人事業者」も加入できるため、支払時は必要経費になるため節税手段の1つとして紹介されます。

個人事業者の取扱い
  • 掛金の支払い:事業所得の必要経費
  • 解約時の入金:事業所得の収入

 

ただし、解約時は事業所得の収入としてドカーンと課税されやすいので、支払時と解約時の税率に注意しましょう。


倒産防止共済が節税になるのはどんなとき?

倒産防止共済が節税になるのは

「掛金を払うときの税率」よりも「解約したときの税率」が低いとき

だけです。

 

個人事業者の税率は、所得税率(5%~45%)+個人住民税率(一律10%)=15%~55%です。

課税所得 税率
195万円以下 5%
195万円超
330万円以下
10%
330万円超
695万円以下
20%
695万円超
900万円以下
23%
900万円超
1,800万円以下
33%
1,800万円超
4,000万円以下
40%
4,000万円超 45%

 

所得が多ければ多いほど、税率も高くなります。

 

たまに

「倒産防止共済は税金の繰延(くりの)べだから節税にならない。意味がない」

と言う意見がありますが、私は正しくないと考えます。

 

それはタイミングをずらすことで「税率の差」による永久的な節税ができるからです。

 

儲かっているときに倒産防止共済で必要経費を増やして、売上が激減しているときに解約するのがポイントです。

 

「掛金を払うときの税率」よりも「解約したときの税率」が低いときは、その税率の差の分だけ節税になります。




倒産防止共済が節税にならないのはどんなとき?

逆にタイミングをずらした結果、「掛金を払うときの税率」よりも「解約したときの税率」が『高い』ときもありえます。

その税率の差の分だけ税金の負担が増えます。

 

節税しているつもりだったのに、トータルで考えると余計な税金を払うことになるわけです。

 

倒産防止共済は、掛金自体が運用されるわけではありません。

解約時まで資金を寝かしているのに、解約して引き出すときに余計な税金がかかってしまうと何をしているのかわかりません。

 

このケースは節税失敗と言えます。




倒産防止共済は本当に節税になるのか?

倒産防止共済で節税を考えるなら、月20万円(年240万円)で目いっぱい掛けることが多いと思います。

例えば

  • 1年目:必要経費▲240万円
  • 2年目:必要経費▲240万円
  • 3年目:必要経費▲240万円
  • 4年目:必要経費▲80万円(合計800万円)

となります。

5年目に解約するとどうなるでしょうか。

  • 5年目:収入+800万円

 

倒産防止共済は部分的に解約ができないので、一気にドカーンと収入が増えます。

 

具体的な数字を入れて節税できるかシミュレーションしてみましょう。

(1) 倒産防止共済をした場合

  • 1~4年目:倒産防止共済を考慮する「前」の所得が900万円
  • 5年目:売上が激減して倒産防止共済を解約する「前」の所得が100万円

で考えてみます。

 

  • 1年目:所得900万円-必要経費240万円=660万円
  • 2年目:660万円(同上)
  • 3年目:660万円(同上)
  • 4年目:所得900万円-必要経費80万円=820万円
  • 5年目:所得100万円+解約による収入800万円=900万円

 

4年間で800万円を必要経費にして、5年目に一括で800万円を収入にしたことになります。

 

住民税は一律10%で5年間のトータルで考えると変わりません。

所得税だけ考えると

  • 1年目:660万円×20%-427,500円=892,500円
  • 2年目:892,500円(同上)
  • 3年目:892,500円(同上)
  • 4年目:820万円×23%-636,000円=1,250,000円
  • 5年目:900万円×33%-1,536,000円=1,434,000円
  • 合計:5,361,500円

が5年間の税金です。

(2) 倒産防止共済をしなかった場合

  • 1~4年目:所得900万円
  • 5年目:売上が激減して所得100万円

で考えてみます。

 

所得税だけ考えると

  • 1年目:900万円×33%-1,536,000円=1,434,000円
  • 2年目:1,434,000円(同上)
  • 3年目:1,434,000円(同上)
  • 4年目:1,434,000円(同上)
  • 5年目:1,000,000円×5%=50,000円
  • 合計:5,786,000円

が5年間の税金です。

(3) 比較

  • 倒産防止共済をした場合:5,361,500円
  • 倒産防止共済をしなかった場合:5,786,000円
  • 結論:倒産防止共済をしたことで424,500円の節税

 

今回は、節税になりました。

1~4年目に倒産防止共済の掛金を必要経費にすることで「高い税率」部分を減らすことができたのがポイントです。




倒産防止共済で節税に失敗するケースは?

別のケースでも計算しておきましょう。

 

今度は

  • 1~4年目:倒産防止共済を考慮する「前」の所得が400万円
  • 5年目:売上が激減して倒産防止共済を解約する「前」の所得が100万円

で考えてみます。

(1) 倒産防止共済をした場合

  • 1年目:所得400万円-必要経費240万円=160万円
  • 2年目:160万円(同上)
  • 3年目:160万円(同上)
  • 4年目:所得400万円-必要経費80万円=320万円
  • 5年目:所得100万円+解約による収入800万円=900万円

 

所得税だけ考えると

  • 1年目:160万円×5%=80,000円
  • 2年目:80,000円(同上)
  • 3年目:80,000円(同上)
  • 4年目:320万円×10%-97,500円=222,500円
  • 5年目:900万円×33%-1,536,000円=1,434,000円
  • 合計:1,896,500円

が5年間の税金です。

(2) 倒産防止共済をしなかった場合

  • 1~4年目:所得400万円
  • 5年目:売上が激減して所得100万円

です。

 

  • 1年目:400万円×20%-427,500円=372,500円
  • 2年目:372,500円(同上)
  • 3年目:372,500円(同上)
  • 4年目:372,500円(同上)
  • 5年目:1,000,000円×5%=50,000円
  • 合計:1,540,000円

が5年間の税金です。

(3) 比較

  • 倒産防止共済をした場合:1,896,500円
  • 倒産防止共済をしなかった場合:1,540,000円
  • 結論:倒産防止共済をしたことで356,500円の税金の負担増加

 

1~4年目の所得がそれほど大きくなかったため、必要経費にしても「高い税率」部分を減らすことができなかったのが失敗のポイントです。




会社と比較してみると?

「会社」も支払時と解約時の税率の差を利用した節税になります。

ただ、会社の方は所得800万円までの法人税率が低い点もあり、解約時のショックが個人事業者よりも少ないです。

また

  • 赤字が出るときに解約(そもそも個人事業者は計算上、赤字になりにくい)
  • 役員退職金の支払いと相殺

をすることで、個人事業者に比べると節税に成功しやすいと言えます。

小規模企業共済と比較してみると?

節税手段として他に紹介される小規模企業共済は、解約した場合に「一時所得」として扱います。

小規模企業共済の取扱い
  • 掛金の支払い:小規模企業共済掛金等掛金控除
  • 解約時の入金:一時所得の収入(50万円控除と1/2課税あり)

 

一時所得は次のように計算されるので有利です。

  • (一時所得の収入-特別控除額50万円×1/2

<例>

(800万円-50万円)×1/2=375万円

 

一方、倒産防止共済は事業所得の収入になるだけです。

倒産防止共済の取扱い
  • 掛金の支払い:事業所得の必要経費
  • 解約時の入金:事業所得の収入

 

倒産防止共済は、800万円が収入になったら、そのまま課税されます。

まとめると

  • 倒産防止共済:支払時と解約時の税率差のみ
  • 小規模企業共済:支払時と解約時の税率差、一時所得による節税メリット

まとめ

このように、個人事業者で倒産防止共済で節税しようと思ったら、所得(税率)が高い期間(2~3年)に行う必要があります。

とはいえ、来年・再来年の売上を予想するのも難しい世の中です。

倒産防止共済で節税しないで、あえて課税されてでも「手元」に現金を残すのも重要かなと思うところです。

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30代共働き。FP2級。書庫のある家に住んでます。お買い物情報やお得なポイント情報が好きです。年末調整や確定申告のやり方もご紹介。モス、スタバ、無印によくいます。⇒ 運営者詳細 / お問い合わせ

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