なぜ素敵なカフェは簡単に失敗するのか?
このブログでは、「自分の時間」を大事にしよう!ということを1つのテーマとしています。
お金についてたくさん書いているのは、お金のルールを知らずに自分の時間を切り売りしている人が多いからです。
さて、自分の時間を大事にしようという話をすると、特に女性の中には、
「私は素敵なカップで美味しい紅茶を飲むのが大好きなんです。いつか自分のお店を開いて、美味しい紅茶とスイーツを出すのが夢なんです」
という方もいるでしょう。
・・・しかし、実際にこの夢を叶えるのは相当大変です。
私は飲食店業のコンサルティングの経験があるのですが、実際の飲食店の経営はレベルが全然違いすぎて、素人には厳しい世界です。
なぜなのか、考えた結果、次の5つの理由があります。
- 飲食店業の本質は「不動産業」だと理解していない。
- 飲食店業は「広告宣伝」が命だと理解していない。
- 飲食店業は「原価計算」が命だと理解していない。
- 飲食店業は典型的な「肉体労働」だと理解していない。
- 自分は「お客」になりたいだけに気づいていない。
1つずつ、見ていきましょう。
もくじ
もくじ(読みたいところへ飛べます)
1.飲食店業の本質は「不動産業」
土日になると、近所のマクドナルドが混んでいます。
しかも交差点の角の非常にいい場所にあるので、周辺道路も混雑するので、勝手に「マック渋滞」と呼んでいます。
マクドナルドとは、誰もが知っている日本最大級の不動産会社です。
ん?
ハンバーガーを売る会社でしょ、と思った方、それは違います。
日本マクドナルド創業者の藤田田(ふじた・でん)氏は、こんなことを言っていました。
「1に立地、2に立地」
またアメリカの本家マクドナルドの創業者であるレイ・クロック(レイモンド・アルバート・クロック)氏は、
「いいかい。私のビジネスはハンバーガーを売ることじゃない。不動産だよ。」
と自らのビジネスの本質を正しくとらえています。
あの会社はハンバーガーを売ること以上に、いかに良い立地にお店をつくるかに多くのお金をかけています。
一度、テレビでマクドナルドの不動産調査マップを見たのですが、周辺にどんな人が住んでいるのかなど、あまりの精密さにびっくりしました。
マクドナルドがある場所は、不動産の価値としては一級品です。
マクドナルドのお店が撤退しても、しばらくお店が空いているなんてことはありません。
他のお店が常に狙っているので、空いたとわかれば争奪戦です。
素敵なカフェを開くと考えたとき、立地については2番目、3番目だと思います。
しかし、カフェというのは「来店型ビジネス」です。
お客様に来てもらわなければ、はじまりません。
そのためには、自分が不動産会社になったつもりで、良い立地を探す必要があります。
さらに言えば、初期投資を減らすために、既に内装や設備が整った「居抜(いぬ)き」の物件を見つけるのが成功への近道です。
2.飲食店業は「広告宣伝」が命
「美味しい紅茶とスイーツがあれば、お客様は自然とやってくる」
と思っていませんか?
それは大きな間違いです。
1番目の立地の話とも関係しますが、来店型ビジネスは、来てもらう以前に「認知」してもらう必要があります。
それにもかかわらず、お客様が来ないとなると、こんな勘違いをします。
「きっと、味が悪いんだ」
その結果、味にこだわるわけですが、原因はそこにありません。
広告宣伝を適切にしていないから、誰も知らないのです。
夜になると、飲食店の店先で、店員さんがわざわざ外に出て、「今ならすぐにご案内できますよ」とやっている光景を見たことがないでしょうか。
あれも立派な広告宣伝です。
ただ何もせずに店の中で待ち続けても、お客は来ません。
どうすればお客が来るのか、考え続ける必要があります。
ものづくりの現場でも、似たような考えの人がいます。
「良いものをつくったのだから、みんな買うはずだ」
どんなに良いものがあっても、それが知られなければ、みんな買いません。
そして、売れないとこんな勘違いをします。
売れないのは、これがどれだけ素晴らしいのかがわからない客がバカだからだ。
お客のせいにしはじめたらもう終わりです。
1に立地、2に広告宣伝です。
良いものであることを正しく伝えられない自分が悪いのです。
3.飲食店業は「原価計算」が命
良いものついでに話をしないといけないのが、「味」へのこだわりです。
飲食店の大部分を占めるコストは、「原価」と「人件費」です。
私は飲食店の社長から直接飲食店経営について学んでいるときに、1番目に「原価3倍増し」と教えてもらいました。
これは、「原価の3倍を売値にしなさい」という教えです。
原価が100円なら売値は300円。
逆に、「原価率は売値の30%におさめるように」と教えている場合もあるでしょう。
いずれにしても、「味」にこだわればこだわるほど、この原価は増えていきます。
美味しい紅茶が飲みたいからと「茶葉」にこだわれば、原価はいくらでも高くなります。
なぜ3倍かというと、原価のほかに、人件費と利益が必要だからです。
原価+人件費+利益=売値
これを無視すれば、一向に利益が出ません。
利益と書きましたが、正確には、広告宣伝費や諸経費を引いた後の残りです。
多くの場合、自分たちだけでやっているので、この人件費の部分を犠牲にしてなんとか帳尻を合わせているかもしれません。
しかし、働いても働いても全然うまくいかないのは、そもそも原価設定と価格設定が間違っているからです。
「こだわり」の素敵なカフェをつくりたい人ほど、ここで失敗します。
その「こだわり」が、自分の首を絞めているのです。
4.飲食店業は典型的な「肉体労働」
飲食店業は、立ちっぱなしの重労働です。
空けている時間帯にもよるかもしれませんが、早朝から、夜遅くまで作業が続きます。
昼はランチのために鍋をふるい、注文をとったり配膳するのは常に立ち仕事です。
「素敵なカフェ」というイメージをもっている人は、もしかすると華やかなイメージを勝手にもっているかもしれませんが、実際には肉体労働です。
例えば、「花屋」も典型的な肉体労働です。
特に「大量の水」を扱う花屋の店員さんは、たいてい、腰、背中、首をいためた経験をもっています。
小学生の時に「お花屋さんになりたい!」と思った方は多いかもしれませんが、それはその裏側を知らないからでしょう。
そういえば、先日、保育園の卒園式で、将来なりたいものの1つで「パティシエ」をあげている女の子がいました。
私の親せきにもパティシエ(パティシエール)がいますが、毎日、重い小麦粉を運び、大量の卵を割り続けます。
重要なのは、「華やかさの裏側」を知った上で、その道を歩む覚悟はあるのか?ということです。
なんとなく素敵なイメージだけでは、数か月はやれたとしても、ずっと健康で、気力・体力が続かなければ、どこかで無理がきてしまいます。
5.自分は「お客」になりたいだけ
本当は最初に置くべきですが、最もやってしまいがちな勘違いはこれです。
なぜ自分は、素敵なカフェを夢見たのでしょうか?
その発想は、自分が「お客」のイメージではないでしょうか。
もしそうであれば、カフェをやってはいけません。
やるべきことは、「自分が大好きなカフェに通う時間を増やすこと」だからです。
自分は「カフェに行くこと」が好きなのです。
決して、
不動産会社のように良い立地の物件を何十件も探し回って値段交渉したり、
冬の雪の日に300枚のチラシを4時間かけて駅前で配ったり、
学生時代に嫌いだった算数の授業を思い出しながら原価計算をしたり、
毎日朝から晩まで立ちっぱなしの重労働で腰を痛めたり、
・・・なんてしたいわけではないのです。
「私はカフェ巡りが好き」
「私はラーメンが好き」
「私はカレーが好き」
だから、「自分が大好きなものを提供する店をもちたい」と飲食店を開業してしまう人たちがいますが、その時点ですでに破滅の道に向かっています。
まとめ
もうお気づきだと思いますが、自分が夢にまで見た素敵なカフェをやると99%失敗する最大の理由は、素敵なカフェを開くことが、「自分の時間」の使い方として間違っているからです。
本当に自分がやりたいことは、「自分が大好きなカフェに通う時間」なのです。
だから、「自分が大好きなカフェに通う時間」を増やさなければならないのです。
そこを間違えてはいけません。
「いやいや、neronaさん。それでも私はやっぱり、カフェをやりたいんですよ」
なるほど。
では、途中で出てきた飲食店の社長がこんなことを教えてくれたので、最後にシェアしましょう。
「もし本当に自分の店を持ちたいなら、試しに2~3日やってみればいい」
いわゆるテストマーケティングの一種です。
2~3日、実際のカフェを借りて、自分が大好きなものを提供する店をやってみるのです。
いきなり土地を探して居抜き物件を購入したり借りるのは、リスクが大きいわけですが、2~3日のことであれば、大したお金もかかりません。
10万円も貯金があればかなりいろいろなことができるでしょう。
広告宣伝をちゃんとして、原価率も計算する。
朝から晩までやってみれば、自分が思ってもいなかったことがいろいろ出てきます。
そして、それを何度か繰り返して、それでもカフェをやりたいと思ったら、やるわけです。
やってみた結果、やっぱり、自分はカフェをやりたいのではなく、カフェに通うことが好きなのだと気づくかもしれません。
でもそれは、やってみたからこそ、本当に自分の中で腑(ふ)に落ちた結果です。
さて、あなたが本当に自分の時間を使いたいことは何ですか?
それは、単なる机上の空論ではなくて、腑に落ちるくらい少しでも何か実践した結果ですか?