医療費控除とふるさと納税が年末調整でできない3つの理由
理由1:「12月31日」が終わってみないと支払った金額がわからないから
年末調整の季節になると意外とよくある質問が、「医療費控除は年末調整でできないの?」「ふるさと納税は年末調整でできないの?」というものです。
結論から言えば、医療費控除もふるさと納税も、年末調整ではできません。
1番もっともらしい理由は、1年間の医療費も、1年間の寄付金(ふるさと納税)の金額も、12月31日が終わるまではわからない、という点にあります。
私は3年前、年末にインフルエンザで高熱が出て、12月31日に夜間救急外来に行ったことがあります。
そうなると、12月31日に医療費を払うかもしれませんね。
この場合、その支払った医療費も医療費控除の対象です。
注:その日は診療だけで、支払いは年始にしてくださいと言われて1月5日に払った場合には、翌年の医療費控除の対象になります(治療した日ではなく、支払日ベースのため)。
このように、年末まで支払った医療費があるかどうかで確定するということは、医療費控除も年末調整でやるとなると、必ず年明け以降に書類を提出することになります。
しかし、実際の年末調整は、年明けからよーいどんでは間に合いません。
そんなことをされたら、1月年始からいきなり給与計算をしている担当者は残業続きで大変なことになります。
ブラックですね。う~ん。ブラック。
そのため、医療費や寄付金のように、年末まで払わないといけない可能性があるものは、年末調整の対象から外しています。
理由2:生命保険料のように「見込み」で計算できないから
Aさん「いやいや、neronaさん、そういうんだったら、生命保険料控除だって、生命保険料を12月まで払ってみないとわからないじゃないですか」
なるほど、そういうご質問もわかります。
では、生命保険料控除の控除証明書は、どうなっているのでしょうか?
毎年、10月から11月に届きますね。
そして、生命保険料控除で使うのは、
(参考)12月末時点のご申告額は以下のとおりです。
といった文言で書かれている方です。
あれ?
変ですよね。
なんで「参考」の金額をもってくるのか。
そうです。あくまで「未来に払う分」も含めた参考だからです。
でも、生命保険料って、毎月同じ金額を払ったり、年1回決まった金額を払ったりとか、わかりやすいですよね。
地震保険料も社会保険料も、大体、決まってます。
だから、9月以降に新しい保険に入ったりしない限りは、控除証明書の12月末までの見込みの金額で、合っているのです(大体ね)。
一方、医療費や寄付金はどうでしょうか。
無理ですよね。
理由3:医療費や寄付金の判断が難しい。
Bさん「でも、neronaさん。昔、内閣府が税制改正要望で寄付金控除を年末調整でやるように働きかけていたじゃないですか。だったらできるんじゃないですか?」
いや~、そうなんですよね~。
税制改正要望(来年の税制改正ではこういうことやってよね、という要望を各省庁がお願いしてます)で寄付金控除を年末調整にって言っているんですよね~。
でも、医療費控除も寄付金控除も、共通して言えるのは、判断が難しいってことなんです。
まず、医療費控除は、「医療費が対象となるかどうか」の判断が難しいです。
医療費の領収書をボンと提出して、「自分、わからないんで、よろしくお願いします!」って会社の年末調整の担当者に出してみてくださいよ。
いや、もう、地獄ですよ、これ。
税理士じゃないんだからね。
全部医療費だったらまだいいですよ。でも、わからないから予防接種の領収書とか混ぜますよね。
ふるさと納税の方も、まあ、ふるさと納税だけならまだいいんですが、公益社団法人とか、公益財団法人とか、学校法人とか、国立大学法人とか、認定NPO法人とかに寄付をした場合、中には、2種類の選択肢があって、どれを使うと有利とか、違うんですよ。
・・・でも、それを判断させるとか、むちゃぶりですよ。
税理士じゃないんだからね。
そうなんです。
医療費控除と寄付金控除には、判断がいるんです。
一方、年末調整で必要なものには、通常、判断は必要ありません。
今後、もし寄付金控除が年末調整でできるようになっても、現在、ふるさと納税が「ワンストップ特例」という例外で確定申告ナシにしているような、「限定的」な年末調整での取扱いが限界だと思います。
※追記
「年末調整の電子化構想」に伴い、これらもできる限り年末調整で行える仕組みが検討されています。
関連:年末調整がネットで完結?2年目以降の住宅ローン控除が楽になる日は来るのか?
最後に:確定申告編は1月公開予定
というわけで、年末調整の記事ばっかり書いてますが、医療費控除やふるさと納税を確定申告で行う方法については、国税庁の確定申告書等作成コーナーというフリーソフトで作る作り方について、ご紹介します。
また、そんなの面倒!という人のために、最低限必要な書類をご紹介するので、それだけもって税務署へ行ってください。