住宅ローン控除ができる当初10年間は早く繰上返済した方が本当に得?金利1%未満なら損かも


「早く繰上返済するほどお得」とよく言いますが、本当にそうなのでしょうか?

例えば3,000万円の住宅ローンを組んでいる方が「毎年100万円ずつ繰上返済する場合」と「10年後に1,000万円を繰上返済する場合」をシミュレーションして比較すると、次のようになります。

(1) 金利2%の場合

100万円×10回 1,000万円一括 差額
利息 +6,028,102円 +7,201,163円 1,173,061円
減税 ▲2,169,182円 ▲2,650,349円 481,167円
合計 3,858,920円 4,550,814円 691,894円

(2) 金利1%の場合

100万円×10回 1,000万円一括 差額
利息 +2,980,133円 +3,485,856円 505,723円
減税 ▲2,127,427円 ▲2,592,090円 464,663円
合計 852,706円 893,766円 41,060円

(3) 金利0.6%の場合

100万円×10回 1,000万円一括 差額
利息 +1,773,768円 +2,060,052円 286,284円
減税 ▲2,109,169円 ▲2,567,288円 458,119円
合計 ▲335,401円 ▲507,236円 171,835円

金利2%のときは早く繰上返済をした方が約70万円得になりますが、金利0.6%で比較するとむしろ早く繰上返済をすると17万円の損になります。

つまり、金利2%時代は「早く繰上返済するほどお得」が常識でしたが、固定金利でも1%台、変動金利なら1%未満もある現在では、早く繰上返済をするのが得とは限らないのです。

住宅ローンの前提条件

  • 住宅ローン:3,000万円
  • 金利:2%、1%、0.6%の3種類(全期間固定)
  • 借入期間:35年間
  • 繰上返済の種類:期間短縮型
  • 住宅ローン控除の区分:一般住宅

シミュレーションには繰上返済も住宅ローン控除も計算してくれる「高機能住宅ローンシミュレーション」というサイトを利用します。




1.金利2%で繰上返済をした場合

(1) 毎年100万円ずつ10回繰上返済

2019年1月から住宅ローン控除が終わる2027年の翌年2028年1月まで毎年100万円ずつ10回に分けて繰上返済をした場合、利息は次のようになります。

  • 元金 30,000,000円
  • 利息 6,028,102円
  • 支払合計 36,028,102円
  • 月額 99,378円
  • 支払期間 22年1か月
  • 住宅ローン控除の減税額 2,169,182円

利息-住宅ローン控除=6,028,102円-2,169,182円=3,858,920円

(2) 住宅ローン控除終了後に1,000万円を一括繰上返済

当初10年間は繰上返済をしないで、住宅ローン控除が終わる2027年の翌年2028年1月に1,000万円を一括で繰上返済をした場合、利息は次のようになります。

  • 元金 30,000,000円
  • 利息 7,201,163円
  • 支払合計 37,201,163円
  • 月額 99,379円
  • 支払期間 22年10か月
  • 住宅ローン控除の減税額 2,650,349円

利息-住宅ローン控除=7,201,163円-2,650,349円=4,550,814円

【結果】住宅ローン控除と繰上返済の時期の違いによる比較

「毎年100万円ずつ10回繰上返済した場合」と「住宅ローン控除終了後に1,000万円を一括繰上返済した場合」を比較してみると、次のとおりです。

100万円×10回 1,000万円一括 差額
利息 +6,028,102円 +7,201,163円 1,173,061円
減税 ▲2,169,182円 ▲2,650,349円 481,167円
合計 3,858,920円 4,550,814円 691,894円

「毎年100万円ずつ10回繰上返済した場合」の方が691,894円有利になりました。

なるほど、これだけ差があれば繰上返済を早くした方がお得と言ってもおかしくありませんね。

・・・ただ、金利がそもそも高いので、借換えをした方がいいかもしれませんね。




2.金利1%で繰上返済をした場合

(1) 毎年100万円ずつ10回繰上返済

2019年1月から住宅ローン控除が終わる2027年の翌年2028年1月まで毎年100万円ずつ10回に分けて繰上返済をした場合、利息は次のようになります。

  • 元金 30,000,000円
  • 利息 2,980,133円
  • 支払合計 32,980,133円
  • 月額 84,685円
  • 支払期間 22年11か月
  • 住宅ローン控除の減税額 2,127,427円

利息-住宅ローン控除=2,980,133円-2,127,427円=852,706円

(2) 住宅ローン控除終了後に1,000万円を一括繰上返済

当初10年間は繰上返済をしないで、住宅ローン控除が終わる2027年の翌年2028年1月に1,000万円を一括で繰上返済をした場合、利息は次のようになります。

  • 元金 30,000,000円
  • 利息 3,485,856円
  • 支払合計 33,485,856円
  • 月額 84,685円
  • 支払期間 23年2か月
  • 住宅ローン控除の減税額 2,592,090円

利息-住宅ローン控除=3,485,856円-2,592,090円=893,766円

【結果】住宅ローン控除と繰上返済の時期の違いによる比較

「毎年100万円ずつ10回繰上返済した場合」と「住宅ローン控除終了後に1,000万円を一括繰上返済した場合」を比較してみると、次のとおりです。

100万円×10回 1,000万円一括 差額
利息 +2,980,133円 +3,485,856円 505,723円
減税 ▲2,127,427円 ▲2,592,090円 464,663円
合計 852,706円 893,766円 41,060円

「毎年100万円ずつ10回繰上返済した場合」の方が41,060円有利になりました。

・・・たったの?

このように、金利1%では住宅ローン控除が1%なので、大して差がつかないという結果になりました。

もちろん、上記の計算では、それ以外の要素を考慮していないので、条件によっては差が開いたり逆転するかもしれませんが、少なくとも繰上返済は早いほどいいというのは金利1%の場合は実態に合いません。




3.金利0.6%で繰上返済をした場合

(1) 毎年100万円ずつ10回繰上返済

2019年1月から住宅ローン控除が終わる2027年の翌年2028年1月まで毎年100万円ずつ10回に分けて繰上返済をした場合、利息は次のようになります。

  • 元金 30,000,000円
  • 利息 1,773,768円
  • 支払合計 31,773,768円
  • 月額 79,208円
  • 支払期間 23年2か月
  • 住宅ローン控除の減税額 2,109,169円

利息-住宅ローン控除=1,773,768円-2,109,169円=▲335,401円

(2) 住宅ローン控除終了後に1,000万円を一括繰上返済した場合

当初10年間は繰上返済をしないで、住宅ローン控除が終わる2027年の翌年2028年1月に1,000万円を一括で繰上返済をした場合、利息は次のようになります。

  • 元金 30,000,000円
  • 利息 2,060,052円
  • 支払合計 32,060,052円
  • 月額 84,685円
  • 支払期間 23年2か月
  • 住宅ローン控除の減税額 2,567,288円

利息-住宅ローン控除=2,060,052円-2,567,288円=▲507,236円

【結果】住宅ローン控除と繰上返済の時期の違いによる比較

「毎年100万円ずつ10回繰上返済した場合」と「住宅ローン控除終了後に1,000万円を一括繰上返済した場合」を比較してみると、次のとおりです。

100万円×10回 1,000万円一括 差額
利息 +1,773,768円 +2,060,052円 286,284円
減税 ▲2,109,169円 ▲2,567,288円 458,119円
合計 ▲335,401円 ▲507,236円 171,835円

「住宅ローン控除終了後に1,000万円を一括繰上返済した場合」の方が171,835円有利になりました。

早く繰上返済をすればするほど損をするということですね。

金利が異なっても住宅ローン控除はほとんど変わらない!

金利2%、1%、0.6%の3パターンについてみてきましたが、3つを並べてみると気づくのは、金利が異なっても同じタイミングで繰上返済をすれば住宅ローン控除の金額はほとんど変わらないという点です。

金利 100万円×10回 1,000万円一括
2% ▲2,169,182円 ▲2,650,349円
1% ▲2,127,427円 ▲2,592,090円
0.6% ▲2,109,169円 ▲2,567,288円

100万円を10年に分けて返済した場合、約210万円前後ですね。

1,000万円一括返済の場合は、約260万円前後です。

ということは、差し引き50万円の差があることになります。

ということは、繰上返済をした結果、利息が50万円を超えて削減されるならやった方がいいですが、逆に利息は50万円も減らないのであれば、繰上返済をしても得にならないということになります。

それでも繰上返済を早くした方がいい場合とは?

(1) 借金を1日でも早く減らしたい方

これは心理的なものなので、損しても心理的に借金が減って気持ちが楽になるのであれば、繰上返済をした方がいいと思います。

(2) 住宅ローン控除が上限までできない方

1人で住宅ローンを借りているけど所得税・住民税の上限がそれほど多くない方がまず該当します。

それから我が家も該当しましたが、夫婦連帯債務で借りたものの妻が産休・育休、あるいは専業主婦になって収入がなくなり、住宅ローン控除ができない時期があると該当します。

これらの場合は住宅ローン控除の恩恵が減るので、上記のシミュレーションのとおりにいきません。

毎年の住宅ローン控除が一体いくらできるのかをよく確認しましょう。

関連 産休・育児休業中でも住宅ローン控除は受けられますか?

また、繰上返済をする時には、借入期間がどうなるかも注意しましょう。

返済の内容によっては住宅ローン控除ができなくなる場合もあります。

詳細は次の記事を参考にしてみてください。

関連 繰上返済で借入期間が10年未満になっても住宅ローン控除はできますか?

まとめ

繰上返済に関する「常識」の1つに対してツッコミを入れてみました。

特に「親」が繰上返済を早くした方がいいと言っている場合は、当時の金利と今では全然違うので、結果も異なる可能性が高いです。

そもそも繰上返済ではなく「借換え」をした方がいいケースもあるでしょう。

 

3,000万円の35年ローンを借りている場合なので、前提条件を変えれば結果も変わると思います。

だからこそ、自分のお金のことは、しっかりと自分で考えましょう。

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40代共働き。書庫のある家に住んでます。お買い物情報やお得なポイント情報が好きです。年末調整や確定申告のやり方もご紹介⇒ 運営者詳細

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