離婚という大きな決断をしたとき、税金の世界で重要になるのが自宅の取扱いです。
今回はその中でも、離婚後の住宅ローン控除について記事にします。
住宅ローン控除を引き続き受けられるかどうかは、
- 住宅ローンを支払っているのは誰か
- 離婚後に自宅に住み続けるのは誰か
で決まるため、注意が必要だからです。
もくじ
1.自宅に「夫」が住み続ける場合
パターン1:100%夫名義で夫が返済し続ける場合
まずはわかりやすいパターンからいきます。
【前提】自宅も住宅ローンも100%夫名義
- 夫:自宅に住み続け、住宅ローンを払い続ける→住宅ローン控除OK
- 妻:離婚後、家を出る
住宅ローン控除の条件はいろいろありますが、住宅ローンの名義人が自宅に住むことが大前提となっています。
離婚により妻と子どもが家を出たとしても、「住宅ローンの名義人である夫」が「夫名義の自宅」に住み続ける場合には住宅ローン控除が可能です。
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パターン2:夫婦の共有から一方に財産分与する場合
難しいのが夫婦で共有している場合です。
夫婦で50%ずつ共有で住宅を購入し、住宅ローンも連帯債務で借りていたとします。
くり返しになりますが、住宅ローン控除を受けるには、住宅ローンの名義人が自宅に住む必要があります。
名義人の1人である妻が自宅に住まなくなってしまうわけですね。
この場合は、離婚による財産分与で「妻の50%の持分」を妻から夫に名義変更で譲渡すれば解決します。
夫側で新たに住宅ローンを借りれば、家も住宅ローンも100%夫の名義になります。
【前提】
当初:50%夫名義・50%妻名義の自宅
離婚:財産分与で「夫」が50%の持分を取得
- 夫:100%夫名義の自宅に住み続け、住宅ローンを払い続ける→住宅ローン控除OK
- 妻:夫に財産分与をして家を出る
従来から持っている夫の50%の持ち分について住宅ローン控除ができるのはパターン1と同じです。
問題は「追加で取得した50%の持ち分」です。
この部分についても夫で住宅ローン控除ができます。
なお、以前の申告の内容から変更になるため、確定申告を再度する必要があります。
年末調整だけで住宅ローン控除を受けられない点にご注意ください。
参考 国税庁のタックスアンサー「共有持分を追加取得した場合の住宅借入金等特別控除」
この取扱いは手続きが複雑になるので、財産分与をする前から税務署や税理士に相談することをおすすめします。
2.自宅に「妻」が住み続ける場合
パターン3:100%夫名義で夫が返済し続ける場合
逆に「夫」が家から出た場合について考えてみます。
妻が子どもを引き取る場合、学校などの生活環境を変えたくないと考えて夫名義の自宅に住み続け、夫は家を出るということがあります。
夫側に離婚の原因があると、夫が養育費・慰謝料代わりに住宅ローンを支払い続け、住宅ローンの返済が終わったら夫から妻に名義変更することで合意します。
住宅ローン控除の条件からすれば、住宅ローンを返済している夫自身は「家に住んでいない」ため、できません。
【前提】離婚後、夫が家を出る
- 夫:住宅ローンを払い続ける→住んでないので住宅ローン控除NG
- 妻:100%夫名義の自宅に住み続ける
妻側からすれば、住宅ローンを払ってもらいながら自宅に住み続けることができるのはメリットですが、この方法は落とし穴があります。
夫は
- 「住まない家」のために住宅ローンを負担をする
- 自分が「住む家」の家賃を負担する
ことで2重の負担になります。
しかも住宅ローン控除は受けられません。
その結果、住宅ローン返済が滞って銀行が自宅を競売にかけ、妻も子どもも家を出ていかなくてはならないケースも現実には起こります。
参考 質問⑰離婚した場合に住宅ローン控除の適用は受けることができますか?|デイライト法律事務所
パターン4:夫婦の共有から一方に財産分与する場合
もう1つのパターンとして、夫から妻に財産分与をする場合も見てみましょう。
【前提】
当初:50%夫名義・50%妻名義の自宅
離婚:財産分与で妻が50%の持分を取得
- 夫:妻に財産分与をして家を出る
- 妻:自宅に住み続け、住宅ローン返済→住宅ローン控除OK
この場合は住宅ローンの名義人である妻が自宅(妻名義)に住んでいるため、妻が住宅ローン控除をすることができます。
参考 国税庁のタックスアンサー「共有持分を追加取得した場合の住宅借入金等特別控除」
3.すべてを財産分与により取得した場合
パターン2とパターン4は共有の場合に追加して持ち分を取得する話でした。
では、100%夫名義の家を「妻」にすべて財産分与した場合はどうなるでしょうか。
妻名義の家にしてしまい、妻が住宅ローンを払って住み続ければ、住宅ローン控除の対象になります。
参考 国税庁のタックスアンサー「財産分与により住宅を取得した場合」
まとめ
一般的なケースをもとに、住宅ローン控除ができるかどうかを見てきました。
名義 | 夫が住む | 妻が住む |
夫100% | ○ | × (財産分与すれば○) |
共有 | 夫保有分は○ 妻→夫に財産分与も○ |
妻保有分は○ 夫→妻に財産分与も○ |
妻100% | × (財産分与すれば○) |
○ |
個々の事情によっては、上記と異なる結論になるケースも考えられます。
離婚の場合はふつうの住宅ローン控除と違って取扱いが難しいです。
事前に税務署や税理士に相談の上、住宅ローンや財産分与をどうするかという話し合いを進めていくことをおすすめします。