医療費控除のわかりにくいものの1つとして、医療保険などの「保険金」の取扱いがあります。
結論から言うと、もらった保険金は、その対象となった治療に対する医療費だけからマイナスします。
もし、その対象となった治療に対する医療費よりも多く保険金をもらっても、「他の医療費」からマイナスをする必要はありません。
この記事で詳しく解説します。
医療費控除の確定申告書を作るための手順はこちらの記事をお読みください。
もくじ
支払った医療費ごとに考えればOK
国税庁の「支払った医療費を超える補てん金」に次のように書かれています。
支払った医療費を超える補てん金
【照会要旨】
同一年中に入院費と歯の治療費を支払った場合において、入院費の金額を超える金額の生命保険契約に基づく入院給付金の支払を受けたときは、その超える部分の金額は、歯の治療費から差し引く必要がありますか。
【回答要旨】
歯の治療費から差し引いて医療費控除の計算を行う必要はありません。
支払った医療費を補てんする保険金等の金額がある場合には、支払った医療費の金額からその医療費を補てんする保険金等の金額を差し引くこととされていますが(所得税法第73条第1項)、この場合の差引計算は、その補てんの対象とされる医療費ごとに行い、支払った医療費の金額を上回る部分の補てん金の額は、他の医療費の金額からは差し引きません。
したがって、照会の場合は、支払った入院費の金額を超える部分の入院給付金の金額を、歯の治療費から差し引いて医療費控除額の計算を行う必要はありません。
つまり
「入院費用を超える保険金をもらったけど、他に歯の治療費を払った分からも引かないといけないの?」
という質問に対して
「引かなくていいよ」
と回答しています。
理由は「保険金の対象になる医療費ごと」にマイナスするので、「他に影響させない」というわけですね。
実際に具体例を見ながら確認してみましょう。
「父の医療費」を入れる?入れない?
鈴木家は
- 夫
- 妻
- 子ども1人
- 生計を一緒にしている同居の夫の父
の4人家族です。
今年は「夫」が歯医者で高い治療を受けたり、「同居の夫の父」が入院したので、医療費が10万円超えそうです。
- 夫+妻+子ども1人の医療費の合計=13万円
- 夫の父=4万円
後日、夫の父に対して保険金8万円がもらえました。
単純に計算すると、4人家族が支払った医療費の合計は「17万円」です。
そして、もらった保険金は「8万円」です。
17万円-8万円=9万円になります。
10万円超えないから医療費控除ができない。
・・・ではありません!
- 入院費4万円-もらった保険金8万円=▲4万円⇒0円
- 他の医療費13万円+0万円=13万円
このように、保険金は
その保険金をもらう原因となった治療に対して支払った医療費からだけ
差し引きます。
他の医療費からは引きません。
父が入院費以外に医療費がある場合
さて、夫の父には入院費以外に医療費がないなんて考えがたいところです。
風邪をひいて内科に行ったり、歯医者に行ったりしてないでしょうか。
【前提】
- 夫・妻・子:13万円
- 夫の父:入院費4万円(もらった保険金8万円)、他の医療費2万円
この場合は、次のようになります。
- 入院費4万円-もらった保険金8万円=▲5万円⇒0円(医療費ごとにする)
- 他の医療費(13万円+2万円)+0万円=15万円
もらった保険金が入院費を超えたとしても、他の医療費から控除する必要はありません。
こうなると、夫の父の分も一緒にして医療費控除をした方が得ですね。
まとめ
保険金の計算の考え方を知っておかないと、医療費控除が受けられるのに受けられないと思い込む恐れがあります。
特に手術や入院をしたときは領収書も多くて大変だと思いますが、1個ずつ順番にやれば大丈夫です。
複雑に思うかもしれませんが、まずは「人別」「病院別」に分けてみましょう。
医療費控除についてはこちらの記事に詳しく書いているので、参考にしてみてください。
関連 医療費控除の確定申告で還付するために気つけたい12のこと
また、実際に確定申告書を作るための手順をまとめました。よろしければどうぞ。