年をまたいで翌年に保険金を受け取る場合の医療費控除の注意点


翌年に保険金を受け取る場合はどうなる?

医療費控除の計算をするときには、支払った医療費から「受け取る保険金」を差し引く必要があります。

「保険金をもらった部分」を医療費控除の対象外にするためです。

 

しかし、保険金を差し引くときに困るのが12月から翌年1月にかけて入院・手術するような場合です。

保険金の受取りが年をまたぎ、確定申告の際に保険金額が確定していない場合もあります。

 

この記事では、そのような場合の医療費控除の注意点について説明します。

 

確定申告書の書き方については、次の記事をお読みください。

関連 医療費控除の確定申告書の書き方と申請方法

保険金の受取りが年をまたぐ場合の取扱い

(1) 保険金額が確定している場合

確定申告時点で受け取る保険金額が確定している場合は、まだもらっていなくてもその保険金額を医療費から控除します。

 

医療費は、支払った日が重要です。

 

しかし「医療費に対する保険金」は、あくまで医療費との対応関係で控除します。

年をまたいで受け取ったとしても「支払った医療費と同じ年分」に、その医療費から控除しないとおかしくなるからです。

具体例1(前提)
  • 下記以外の医療費:8万円
  • 12月に入院と手術をして医療費を支払い:12万円
  • 翌年2月に保険金額が5万円と確定
  • 翌年3月に確定申告で医療費控除を申請

 

まず先に入院・手術と保険金について計算します。

  • 12万円-保険金5万円7万円

※答えがマイナスの場合は「0円」

 

医療費控除の対象になるのは

  • 8万円+7万円=15万円

の部分です。

(2) 保険金額が未確定の場合

(1)の場合で保険金の請求手続が遅れて翌年3月15日を過ぎそうだという場合はどうすればよいでしょうか。

この場合、保険金が「未確定」なので医療費控除の計算ができないように思うところです。

 

しかし国税庁の説明では「見積額」でいったん計算し、後日、さかのぼって医療費控除を訂正するように書いてあります。

医療費を補てんする保険金等が未確定の場合

【照会要旨】

12月に支払った入院費用を補てんするための保険金の額が、翌年3月の確定申告の際に確定していない場合は、どのように医療費控除の計算を行えばいいでしょうか。

【回答要旨】

受け取る保険金等の額を見積もって、その見積額を支払った医療費から控除します。

医療費を補てんする保険金等の額が医療費を支払った年分の確定申告書を提出する時までに確定していない場合には、受け取る保険金等の額を見積もりその見積額を支払った医療費から控除します。

この場合、後日、その保険金等の確定額が、見積額と異なることとなったときは、遡ってその年分の医療費控除額を訂正します。

出典 国税庁「医療費を補てんする保険金等が未確定の場合

 

具体例2(前提)
  • 下記以外の医療費:8万円
  • 12月に入院と手術をして医療費を支払い:12万円
  • 翌年3月に保険金額が確定しない(見積額4万円?)
  • 翌年3月に確定申告で医療費控除を申請

 

まず先に入院・手術と保険金について計算します。

  • 12万円-保険金の見積額4万円8万円

※答えがマイナスの場合は「0円」

 

医療費控除の対象となるのは

  • 8万円+8万円=16万円

の部分です。

 

しかし、これはあくまで「仮」の計算です。

 

後日、実際にもらった保険金(確定額)が5万円だとすると、

医療費控除の対象となるのは

  • 12万円-保険金の確定額5万円7万円
  • 8万円+7万円=15万円

の部分です。

 

結果、1万円分、医療費控除をし過ぎていたことになります。

 

この場合は、確定申告の訂正(税金が増える場合は「修正申告」、税金が減る場合は「更正の請求」)が後日、必要となります。

修正申告や更正の請求の手続きの具体的なやり方については、税務署にご相談ください。

関連 税金に関する相談は税理士または最寄りの税務署へ

(3) 3月16日以降にする手もある?

国税庁の説明には書いてありませんが、会社員のように年末調整で税金計算が完結する場合には、翌年3月15日までに医療費控除の申請をする必要はありません。

 

「還付申告」といって、翌年3月15日までではなく翌年から5年以内に行うことができるからです。

そのため保険金額が確定するのを待って3月16日以降にするのも1つの考え方です。

ただし、住民税に反映されることを考えると遅くとも3月末までにはした方が良いのかなと思うところです。




年をまたぐ医療費に保険金をまとめてもらった場合

もう1つ困ったケースが、12月から翌年1月にまたがって入院費用が発生して、後日、保険金をまとめてもらう場合です。

医療費を補てんする保険金等の金額のあん分計算

【照会要旨】

入院費用を12月と翌年1月に支払いましたが、この入院費用を補てんする保険金を2月にまとめて受領しました。

この場合の保険金は、いつの年分の医療費から差し引けばよいのですか。

【回答要旨】

原則として、その保険金の金額を、支払った入院費用の額に応じて、各年分にあん分します。

医療費は、現実に支払った年分の医療費控除の対象となるので、照会の入院費は、前年とその翌年のそれぞれの年分の医療費控除の対象となります。

この場合、入院費用を補てんする保険金がいずれの年分の医療費をも補てんするものであるときは、原則として、当該保険金の金額を、支払った入院費用の額に応じて各年分にあん分します。

(注) 支払った医療費を補てんするための保険金は、身体の傷害に基因して支払を受ける保険金に該当し、非課税となります。

出典 国税庁「医療費を補てんする保険金等の金額のあん分計算

 

具体例3(前提)
  • 12月:入院費用15万円
  • 1月:入院費用5万円
  • 保険金:10万円

 

このうち保険金10万円

  • 12月:保険金10万円×15万円÷(15万円+5万円)=保険金7万5,000円
  • 1月:保険金10万円×5万円÷(15万円+5万円)=保険金2万5,000円

入院費用の比であん分されます。

 

結果

  • 12月:入院費用15万円-保険金7万5,000円=7万5,000円
  • 1月:入院費用5万円-保険金2万5,000円=2万5,000円

になります。




まとめ

医療費控除における保険金は、「支払った医療費」にひもつきで差し引きましょうという制度となっています。

 

なお、保険金をマイナスするのはその医療費だけです。

医療費全体から引かないように注意しましょう。

 

医療費控除については次の記事もあわせてお読みください。

関連 医療費控除の確定申告書の書き方と申請方法

関連 医療費控除の確定申告で還付するために気つけたい12のこと

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※税金計算や扶養に入れるかなどの具体的な有利不利の判断については税金の相談方法をお読みください。
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40代共働き。書庫のある家に住んでます。お買い物情報やお得なポイント情報が好きです。年末調整や確定申告のやり方もご紹介⇒ 運営者詳細 / お問い合わせ

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