2019/01/17
年をまたいで翌年に保険金を受け取る場合の医療費控除の注意点
医療費控除の計算をするときには、支払った医療費から「受け取る保険金」を差し引く必要があります。
保険金をもらった部分については医療費控除の対象外にするためです。
しかし保険金を差し引くときに困るのが12月に入院・手術するような場合です。
保険金の受け取りが年をまたぎ、確定申告の際に保険金額が確定していない場合があります。
この記事では、そのような場合の医療費控除の注意点について説明します。
1.保険金の受け取りが年をまたぐ場合
1-1. 保険金額が確定している場合
確定申告時点で受け取る保険金額が確定している場合は、もらっていなくてもその保険金額を医療費から控除します。
医療費については「支払った日」が重要となります。
しかし「医療費に対する保険金」については、あくまで医療費との対応関係で控除するので、受け取りが年をまたいだとしても「支払った医療費と同じ年分」にその医療費から控除することになります。
例えば、
- 下記以外の医療費:8万円
- 12月に入院と手術をして医療費を支払い:12万円
- 翌年2月に保険金額が5万円と確定
- 翌年3月に確定申告で医療費控除を申請
となっていれば、医療費控除の対象となるのは、
8万円+(12万円-保険金5万円)=15万円
※カッコ内は7万円
の部分になります。
(2) 保険金額が未確定の場合
さて、(1)の場合で保険金の請求手続が遅れて翌年3月15日を過ぎそうだという場合はどうすればよいでしょうか。
この場合、保険金が「未確定」なので医療費控除の計算ができないように思うところですが、国税庁のタックスアンサーでは、「見積額」でいったん計算して、後日、さかのぼって医療費控除を訂正するようにわざわざ書いてあります。
医療費を補てんする保険金等が未確定の場合
【照会要旨】
12月に支払った入院費用を補てんするための保険金の額が、翌年3月の確定申告の際に確定していない場合は、どのように医療費控除の計算を行えばいいでしょうか。
【回答要旨】
受け取る保険金等の額を見積もって、その見積額を支払った医療費から控除します。
医療費を補てんする保険金等の額が医療費を支払った年分の確定申告書を提出する時までに確定していない場合には、受け取る保険金等の額を見積もり、その見積額を支払った医療費から控除します。
この場合、後日、その保険金等の確定額が、見積額と異なることとなったときは、遡ってその年分の医療費控除額を訂正します。
国税庁の公式見解からすると、
- 下記以外の医療費:8万円
- 12月に入院と手術をして医療費を支払い:12万円
- 翌年3月に保険金額が確定しない(見積額4万円?)
- 翌年3月に確定申告で医療費控除を申請
とすると、医療費控除の対象となるのは、
8万円+(12万円-保険金見積額4万円)=16万円
※カッコ内は8万円
の部分になります。
しかし、これはあくまで仮の計算となります。
もし、実際にもらった保険金(確定額)が5万円だとすると、
医療費控除の対象となるのは、
8万円+(12万円-保険金確定額5万円)=15万円
※カッコ内は7万円
の部分になります。
したがって、1万円分医療費控除をし過ぎていることになります。
この場合は、確定申告の訂正(税金が増える場合は「修正申告」、税金が減る場合は「更正の請求」)が後日、必要となります。
修正申告や更正の請求の手続きの具体的なやり方については、税務署にご相談ください。
(3) ほとんどの会社員は3月15日までにする必要はない!
さて、国税庁のタックスアンサーではなぜか書いてありませんが、会社員のように年末調整で税金計算が完結する場合には、翌年3月15日までに医療費控除の申請をする必要はありません。
「還付申告」といって、翌年3月15日までではなく翌年から5年以内に行うことができます。
したがって、そもそも保険金額が確定するのを待ってから、つまり翌年の3月16日以降にするのが1番手間がかかりません。
ただし、この場合は申請時期が遅くなるため還付金がもらえる時期も遅くなります。
2.年をまたぐ医療費に保険金をまとめてもらった場合
もう1つ困ったケースが、12月から翌年1月にまたがって入院費用が発生して、保険金をまとめてもらう場合です。
医療費を補てんする保険金等の金額のあん分計算
【照会要旨】
入院費用を12月と翌年1月に支払いましたが、この入院費用を補てんする保険金を2月にまとめて受領しました。
この場合の保険金は、いつの年分の医療費から差し引けばよいのですか。
【回答要旨】
原則として、その保険金の金額を、支払った入院費用の額に応じて、各年分にあん分します。
医療費は、現実に支払った年分の医療費控除の対象となるので、照会の入院費は、前年とその翌年のそれぞれの年分の医療費控除の対象となります。
この場合、入院費用を補てんする保険金がいずれの年分の医療費をも補てんするものであるときは、原則として、当該保険金の金額を、支払った入院費用の額に応じて各年分にあん分します。
(注) 支払った医療費を補てんするための保険金は、身体の傷害に基因して支払を受ける保険金に該当し、非課税となります(所得税法施行令第30条)。
例えば、
- 12月:入院費用15万円
- 1月:入院費用5万円
- 保険金:10万円
だとすると、保険金10万円は
- 12月:10万円×15万円÷(15万円+5万円)=保険金7万5,000円
- 1月:10万円×5万円÷(15万円+5万円)=保険金2万5,000円
とあん分されます。
したがって、
- 12月:入院費用15万円-保険金7万5,000円=7万5,000円
- 1月:入院費用5万円-保険金2万5,000円=2万5,000円
となります。
まとめ
医療費控除における保険金については、年をまたいで入金されてもあくまで「支払った医療費」にひもつきで考えましょうという制度となっています。
なお、保険金をマイナスするのはその医療費だけからですので、医療費全体から引かないように注意しましょう。
医療費控除については次の記事もあわせてお読みください。
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