この記事では年末調整で提出する
- 給与所得者の基礎控除申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
- 所得金額調整控除申告書
が1セットになっている書類の書き方や記入例をご紹介しています。
年末調整を行う方は、「基礎控除」を受けるために全員が提出必須です。
独身者、パート・アルバイトの方も提出が必要です。
※年収0円の場合は、勤め先の判断に従ってください。
※夫または妻がパート・アルバイトの場合はこちらを先にお読みください。
この書類は
- 基礎控除(基礎控除申告書)
- 配偶者控除(配偶者控除等申告書)
- 配偶者特別控除(配偶者控除等申告書)
- 所得金額調整控除(所得金額調整控除申告書)
の各控除を受けるために書く書類です。
この記事では「紙に手書き」をする前提で解説しています。
その他の年末調整書類については下記をお読みください。
※年末調整に関するまとめ記事はこちらをお読みください。
※詳しい源泉徴収票の見方は下記の記事で紹介しています。
もくじ
用紙の入手方法と今回の変更点
(1) 用紙の入手方法
基本的には勤め先から配布されますが、用紙がない場合には次からダウンロードできます。
「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告」のページの「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を選択
(2) 今回の変更点
特にありません。
あなたの基本情報
まずはあなたの基本情報について記載します。
最初から印字されている場合もあれば、空欄になっている場合もあります。
▼勤め先
何を書いたらいいかわからなければ空欄のままでもOKです。
この欄は、勤め先が「会社」の場合に書きます。
書くのはあくまで会社自身のため、自分で調べて書く必要はありません。
※勤め先が「個人事業者」の場合は、そもそも書く必要はありません。
▼あなたの氏名・住所
例えば田中一郎なら「田中 一郎」と書いて、その上にカタカナで「タナカ イチロウ」と書きます。
住所は都道府県名を省略しても特に問題はありません。
【年収850万円超】所得金額調整控除申告書
計算の順番から、まず1番下の「所得金額調整控除申告書」について解説します。
※年収850万円以下の方は書く必要がないので、次の「基礎控除申告書」に進んでください)。
給料年収850万円を超える場合に記載が必要です。
夫婦ともに年収850万円超で子どもがいる場合、所得金額調整控除は夫婦双方でできます。
扶養控除と考え方が違うので、子どもを扶養につけていない方は漏れないようご注意ください。
そもそも所得金額調整控除とは?
令和2年から給与所得控除が改正されて、給料年収850万円超の場合は増税になります。
ただし介護・子育て世帯の負担が増えないようにするため、次のいずれかに該当する場合には、所得金額調整控除ができます。
- あなた自身、同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者
- 年齢23歳未満(平成13年1月2日以後生まれ)の扶養親族
申告書の書き方
▼「要件」
いずれかの要件に該当しているかをチェックします。
23歳未満の子どもを扶養している場合は、1番下の「扶養親族が年齢23歳未満」にチェックです。
もし2つ以上当てはまる場合は、どれか1つをチェックすればOKです。
▼「☆扶養親族等」
- 同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者
- 年齢23歳未満(平成13年1月2日以後生まれ)の扶養親族
の場合には、「☆扶養親族等」の欄を書きます。
▼「★特別障害者」
「あなた自身、同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者」の場合は、「特別障害者に該当する事実」を記載します。
ふつうは「扶養控除申告書」で障害者控除を受けるために書いているため、「□ 扶養控除等申告書のとおり」にチェックをします。
【全員必須】基礎控除申告書
次は左の「基礎控除申告書」です。
年末調整を行う方は、「基礎控除」を受けるために全員が提出必須です。
独身者の方も、パート・アルバイトの方も提出が必要です。
そもそも基礎控除とは?
誰でも受けられるのが基礎控除・・・でしたが、令和2年からは所得制限により所得2,500万円を超える場合は対象外になりました。
<令和元年まで>
- 誰でも:一律38万円
<令和2年から>
- 所得2,400万円以下:48万円控除
- 所得2,400万円超2,450万円以下:32万円控除
- 所得2,450万円超2,500万円以下:16万円控除
- 所得2,500万円超:対象外(0円)
なお、給料年収2,000万円を超えると年末調整ができないため、年末調整の対象者で所得2,400万円を超える人はまずいません。
基礎控除を受けるためには「基礎控除申告書」を提出するのが必須のため、所得制限に無関係な人、基本全員がこの書類を提出するという異常な制度になっています。
※このような意味のない制度は早急に改正し、本当に提出すべき人だけが提出する制度とすべきと個人的には考えます。
申告書の書き方
所得制限が設けられたので、「所得金額」を計算する様式になっています。
【例】年収897万円で所得金額調整控除がある場合
(1) 897万円-給与所得控除195万円=702万円
(2) 所得金額調整控除=(897万円-850万円)×10%=47,000円
(3) 所得金額=(1)-(2)=6,973,000円
※「区分Ⅰ」のA~Cは配偶者控除・配偶者特別控除を受ける人だけ記載します。それ以外の人は記載不要です。
▼所得金額の求め方
次の表に当てはめて計算します。
<参考>
- 年収0円⇒所得0円
- 年収50万円⇒所得0円
- 年収100万円-55万円=所得45万円
- 年収200万円÷4=50万円⇒50万円×2.8-8万円=所得132万円
- 年収300万円÷4=75万円⇒75万円×2.8-8万円=所得202万円
- 年収400万円÷4=100万円⇒100万円×3.2-44万円=所得276万円
- 年収500万円÷4=125万円⇒125万円×3.2-44万円=所得356万円
- 年収600万円÷4=150万円⇒150万円×3.2-44万円=所得436万円
- 年収700万円×0.9-110万円=所得520万円
- 年収800万円×0.9-110万円=所得610万円
- 年収900万円-195万円=所得705万円
- 年収1,000万円-195万円=所得805万円
▼所得金額調整控除がある場合
給料年収850万円超で「所得金額調整控除」の対象になる場合は
- (給料年収-850万円)×10%(最高15万円)
で計算した金額をさらに引きます。
(例)年収900万円
- (900万円-850万円)×10%=5万円
- (900万円-給与所得控除195万円)-所得金額調整控除5万円=所得700万円
▼給料以外の所得の合計額
給料以外の収入がある場合の欄もありますが、複雑すぎるので省略します。
そもそも給料以外の収入があることを勤め先に自己申告すること自体に微妙な問題があります。
あえて書かないで確定申告でしっかり税金を計算するのが現実的ではないかと考えます。
「所得金額」さえ計算できれば、後は「判定」で該当するものを記載するだけです。
多くの人は「区分Ⅰ」が「A」、「基礎控除の額」が「480,000円」になります。
※「区分Ⅰ」のA~Cは配偶者控除・配偶者特別控除を受ける人だけ記載します。それ以外の人は記載不要です。
【配偶者控除等を受ける場合】配偶者控除等申告書
最後に右の「配偶者控除等申告書」です。
配偶者控除または配偶者特別控除を受けるときは記載必須です。
- 本人の所得が1,000万円以下(給料年収目安1,195万円以下※)
- 配偶者の所得が133万円以下(給料年収目安201万6,000円以下)
の場合に配偶者控除または配偶者特別控除が利用できます。
※所得金額調整控除を受ける場合は1,210万円以下
逆に言えば
- 本人の所得が1,000万円超
- 配偶者の所得が133万円超
のいずれかに該当する場合は、配偶者がいても控除が受けられないので記載不要です。
配偶者の基本情報
配偶者について、次の情報を記載します。
- 氏名・フリガナ:配偶者の氏名・フリガナ
- 個人番号:勤め先の指示に従って記載してください。
- あなたと配偶者の住所又は居所が異なる場合の配偶者の住所又は居所:同じ場合は空欄でOKです。
- 生年月日:配偶者の生年月日
- 「非居住者である配偶者」「生計を一にする事実」:海外に配偶者がいる場合のみ記載
配偶者の合計所得の見積額
先ほどの基礎控除申告書と同様、配偶者も所得金額を計算します。
給料のみの場合、162万5,000円以下の場合は給与所得控除「55万円」を引くだけです。
右の「判定」を見て区分を確認します。
所得48万円で70歳以上(昭和29年1月1日以前生まれ)の場合は、「老人控除対象配偶者」に該当します。
- 通勤のための交通費は所得税が課税されないので原則として含みません。
- 出産手当金、出産育児一時金、育児休業給付金も含みません。
本人の合計所得の見積額
「基礎控除申告書」で計算した「所得金額」を利用する仕組みになっています。
控除額の計算
本人の所得区分(区分Ⅰ)と配偶者の所得区分(区分Ⅱ)が交わる金額を探しましょう。
上記では、「配偶者控除」「38万円」のところが交わるため、1番右の「配偶者控除の額」に「380,000」と記載しています。
年末調整の段階で所得が分からない場合は?
もし年末調整の段階ではよくわからない場合は、書類の提出を見送ることも可能です。
収入金額や必要経費は翌年1月にはおおよそわかると思います。
その後の確定申告で配偶者控除または配偶者特別控除をする方が良いかもしれません。
以上で終了です。
書類を書き終わったら
おつかれさまでした!!!
さて、書類を書き終わったら
- 用紙をコピーする
- スマホで写真を撮る
のいずれかをして、「来年の年末調整」のために残しておくことをおすすめします。
1年に1回しかしないことなので、ふつう忘れます。
「コピーした用紙を1年も保管する自信がない!」
という方は、スマホで写真を撮るのをおすすめします。
まとめ
今回は「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の書き方についてご紹介しました。
それ以外の書類については下記をお読みください。
※年末調整に関するまとめ記事はこちらをお読みください。
※詳しい源泉徴収票の見方は下記の記事で紹介しています。
6 件のコメント
とても役に立ちました。
いつもわけの分からない役所のフォーマットに、説明に
なっていない説明のプリントしかもらえないので…
これらの書類の書式、もっと簡素に分かりやすく出来ると
思うのですが、お役所はやる気が無いのでしょうね。
毎年この時期になるとうんざりしますが今年はこちらの
お陰でスムーズにできました。感謝いたします。
>えいこさん
こんにちは。neronaです。
わざわざご連絡ありがとうございました^^
毎年複雑になっていくので私もどうしたものかと思いながら
この記事を書いていますが、少しでもお役に立てたなら幸いです。
新しい様式とのことで戸惑いましたが、こちらを拝見しながら無事記載することができました。
本当に助かりました。ありがとうございました。
>ponさん
こんにちは。neronaです。
わざわざご連絡ありがとうございましたm(_ _)m
励みになります。
大変、勉強になります。1つ質問がありますので可能であればお応えいただければが嬉しいです。
我が家は妻が2018年4月末から産休育休をとり、
夫の年収 は500万円程の30台夫婦です。
通帳を確認したところ6月のボーナスを合わせて160万円程の給与収入があったようなので、
配偶者特別控除には該当すると考えています。
所得の計算に関しての質問ですが、
妻名義の生命保険や地震保険はこの計算でいう所得では、私が計算して差し引いてはいけないのでしょうか?
それとも妻の年末調整を行ったあと、保険を考慮した所得で還付申告をした方が良いでしょうか?
もしくは、配偶者特別控除には生命保険控除は関係ないのでしょうか?
情報が少なく困っています。
よろしくお願いします。
>sakamotoさん
おはようございます。neronaです。
>配偶者特別控除には生命保険控除は関係ない
これが正解です。
配偶者控除・配偶者特別控除をする時の判定では無視してください。
ただし、年末調整で生命保険料控除・地震保険料控除をするかどうかは
別の話です。
この点は下記の記事に詳細を譲ります。
https://shokonoaruie.com/103man-hoken/