令和2年の年末調整で提出する「令和2年分」と「令和3年分」の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」について、具体的な記入例をもとに書き方をご紹介しています。
勤め先から給料をもらう人は、原則として必ず提出が必要な書類です。
独身者の方でも、1番上の部分だけ記載して提出しましょう。
ただし、2か所以上で働いている場合は1か所にしか提出できません(複数の勤務先へ提出は不可)。
※夫または妻がパート・アルバイトの場合はこちらを先にお読みください。
この書類は
を受けるために記載しますが、これらの控除に関係ない方も提出する必要があります。
令和2年分から「年末調整の電子化」がスタートしました。
企業によってはパソコンで入力して「電子データ」を提出する方法に変わった場合もあるので、会社の指示に従ってください。
この記事では「紙に手書き」をする前提で解説しています。
扶養控除申告書以外の年末調整書類については下記をお読みください。
※年末調整に関するまとめ記事はこちらをお読みください。
※詳しい源泉徴収票の見方は下記の記事で紹介しています。
もくじ
用紙の入手方法と令和3年分の変更点
(1) 用紙の入手方法
基本的には勤め先から配布されますが、用紙がない場合には次からダウンロードできます。
(2) 令和3年分の変更点
- 1番右上の「給与の支払者受付印」が削除
- 寡婦控除の改正、ひとり親控除の創設、寡夫控除の廃止によって「C 障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」が「C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」に変更(※実際は令和2年分から適用されるため、令和2年分は手書きで修正が必要な場合も)
- 1番下の「単身児童扶養者」の欄が削除 (※令和2年4月1日以降に提出する扶養控除申告書は記載不要)
ほとんどの方にとってはあまり変わりませんが、令和元年まで「寡婦控除」や「寡夫控除」を受けていた方は、税制改正の影響が令和2年分の扶養控除申告書からあるので注意が必要です。
なぜ令和2年分と令和3年分の2種類あるのか?
- 令和2年分:令和2年の年末調整
- 令和3年分:令和3年1月から支払う給料で天引きする所得税の計算
このようにそれぞれ目的が異なるので2種類書かせています。
ただし「令和3年分」の扶養控除申告書しか配らない会社もよくあります。
これは既に昨年の年末調整で「令和2年分」の扶養控除申告書を提出しているためです。
もし令和2年中に結婚・離婚や子どもが生まれた場合には修正が必要です。
修正をしていない場合は年末調整のこのタイミングで必ず勤め先に「令和2年分」の扶養控除申告書をもらって修正しましょう。
扶養控除申告書の書き方と記入例【全員共通】
扶養控除申告書は「令和2年分」と「令和3年分」の2種類がありますが、ほとんど共通なので違うところだけわかるようにして解説します。
まずは扶養控除申告書の中で全員が共通して書くべき欄からいきます。
独身者の方でもここは記載して提出してください。
税務署長・市区町村長
- 税務署長:『勤め先』の所在地(住所)を担当している税務署名
- 市区町村長:『あなた自身』の住んでいる市区町村名
を書きます。
よくわからなければ空欄のままでもOKです。
給与の支払者の名称(氏名)・法人(個人)番号・所在地(住所)
この3つはふつうはあらかじめ印字されていることが多い欄です。
- 名称(氏名):勤め先が会社なら会社名、個人事業者なら屋号やその個人の氏名
- 法人(個人)番号:勤め先が書く欄なので記載不要
- 所在地(住所):勤め先の住所
氏名、(印)、個人番号、住所又は居所
(印)には一般的にはシャチハタではないハンコ(印鑑)を押します。
本人がこの書類を書いたという証明のためにハンコを押すので、シャチハタは避けるのが無難です。
※「押印廃止」の動きがありますが、現時点では必要です。
また、「個人番号(マイナンバー)」は、勤め先によって管理が異なるので勤め先の指示に従ってください。
住所については、令和2年中に引越しをした、またはこれから令和3年1月1日までに引越しをする場合は令和3年1月1日時点の新しい住所を書きます。
令和3年1月2日以降に引越し予定の場合はとりあえず「現在の住所」を書いて、引越し後に勤め先に伝える際に「令和3年分」を修正します。
生年月日、世帯主の氏名、続柄
生年月日は和暦で書きます。
世帯主が自分の場合、「世帯主の氏名」は自分の名前、「あなたとの続柄」は本人となります。
あなたと世帯主が異なる場合は、例えば次のように書きます。
あなた | 世帯主 | 世帯主の氏名 | 続柄 |
夫 | 妻 | 妻の名前 | 妻 または 配偶者 |
妻 | 夫 | 夫の名前 | 夫 または 配偶者 |
子 | 親 | 親の名前 | 父・母 または 親 |
親 | 子 | 子の名前 | 子 |
また、配偶者がいれば「有」に「〇」をつけて、いなければ「無」に「〇」をつけます。
※配偶者控除や配偶者特別控除を受けられるかどうかは無関係です。
(参考)
1番右の「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」は、ふつう使わないので空欄でOKです。
A 源泉控除対象配偶者
源泉控除対象配偶者とは?
生計を一にする所得の見積額が95万円以下の配偶者がいる場合に記載します。
給料のみの場合は給料年収150万円以下です。
※あなた自身の所得が900万円を超える場合は記載不要です。
配偶者控除・配偶者特別控除を受ける場合は、合わせて「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出が必須です。
「区分A」の書き方
氏名と生年月日を記載します。
※「個人番号(マイナンバー)」は、勤め先によって管理が異なるので勤め先の指示に従ってください。
住所はあなたと同居しているなら「同上」でOKです。
給料のみの場合は「給与所得控除55万円」を引くだけです。
- 見込み年収-55万円=所得の見積額
- 40万円-55万円=0円(マイナスは0円)
- 80万円-55万円=25万円
- 103万円-55万円=48万円
- 120万円-55万円=65万円
- 150万円-55万円=95万円
※年収150万円を超える場合は所得95万円を超えるので対象外
それ以外のケースや詳しい計算方法は下記の記事をお読みください。
「所得の見積額」は、あくまで「見込み」なので何か書類を出して証明する必要はありません。
給料なら昨年の源泉徴収票や今年の給料明細などから推測して計算しましょう。
しかし、なぜか源泉徴収票を出すように無茶ぶりをする企業があるので、その場合は下記の記事をお読みください。
関連 配偶者控除で年収103万円超でないことを証明する必要はあるの?
産休・育休中は注意!
タイミングによっては、今年や来年の給料年収が150万円以下になる場合もあるので記載しましょう。
関連 共働きでも配偶者控除は使えるの?産休・育児休業中は節税のチャンス!
今年、配偶者と結婚・離婚した場合は?
令和2年中に結婚した場合は、「令和2年分の扶養控除申告書」に追加が必要です。
また、離婚した場合は逆に訂正する必要があります。
関連 扶養控除申告書の異動月日及び事由とは?書き方の記入例と訂正方法
B 控除対象扶養親族(16歳以上)
控除対象扶養親族とは?
配偶者以外に扶養している親族がいて、次の所得以下の場合には控除対象扶養親族として「扶養控除」の対象になります。
生計を一にする所得の見積額が48万円以下の親族がいる場合に記載します。
給料のみの場合は給料年収103万円以下です。
給料のみの場合は「給与所得控除55万円」を引くだけです。
- 見込み年収-55万円=所得の見積額
- 40万円-55万円=0円(マイナスは0円)
- 80万円-55万円=25万円
- 103万円-55万円=48万円
※年収103万円を超える場合は所得48万円を超えるので対象外
それ以外のケースや詳しい計算方法は下記の記事をお読みください。
「区分B」の書き方
氏名と生年月日を記載します。
※「個人番号(マイナンバー)」は、勤め先によって管理が異なるので勤め先の指示に従ってください。
扶養控除は年齢別で控除できる金額が異なるので「年齢」が重要になりますが、「生年月日」で判断します。
特に2枚の書類でそれぞれ対象範囲が異なるので注意しましょう。
- 70歳以上:同居老親等58万円、その他48万円
- 23歳~69歳:38万円
- 19歳~22歳:63万円
- 16歳~18歳:38万円
- 16歳未満:対象外
(1) 70歳以上(老人扶養親族)
- 令和2年分:昭和26年1月1日以前生まれ
- 令和3年分:昭和27年1月1日以前生まれ
▼同居の場合
※「老人扶養親族」に該当し、「同居」の条件も満たすため、同居老親等に「レ」をつけます。
▼別居の場合
※「老人扶養親族」には該当しますが同居ではないため、「その他」に「レ」をつけます。
詳細は次の記事をお読みください。
関連 年金収入の親も扶養控除を!老人扶養親族の条件と申告書の書き方
(2) 19歳~22歳(特定扶養親族)
- 令和2年分:平成10年1月2日~平成14年1月1日生まれ
- 令和3年分:平成11年1月2日~平成15年1月1日生まれ
※「特定扶養親族」に該当するため、「特定扶養親族」に「レ」をつけます。
(3) 16~18歳,23歳~69歳(一般の扶養親族)
(1)と(2)に該当しない16歳以上の扶養親族
- 令和2年分:平成17年1月1日以前生まれ
- 令和3年分:平成18年1月1日以前生まれ
子どもが就職したら注意!
例えば今年4月に子どもが就職して新社会人になった場合は、扶養から外れる可能性が高いです。
この場合は扶養控除申告書を訂正する必要があります。
C 障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生
(1) 障害者
障害者控除を受ける場合に、記載する欄です。
<該当者>
- あなた自身⇒本人欄
- 同一生計配偶者(所得48万円以下の生計を一にする配偶者)⇒同一生計配偶者の欄
- 扶養親族(所得48万円以下の生計を一にする親・祖父母・子・孫など)⇒扶養親族の欄(人数も記載)
<区分>
- 一般の障害者
- 特別障害者
- 同居特別障害者
障がいの区分については下記の記事をお読みください。
(例)障がいの程度が重度の子(同居)を1人扶養している場合
右の空欄(「左記の内容」)に障害の状況を記載します。
- 対象者の名前
- 障害の程度(例:身体障害者3級)
- 交付を受けている手帳(例:身体障害者手帳)などの種類と、手帳の交付年月日
勤め先によってはあわせて障害者手帳のコピーの提出を求められると思いますので、指示に従ってください。
関連 療育手帳で障害者控除を受けるための扶養控除等申告書の書き方
(2) 寡婦、ひとり親
令和2年から「寡夫控除」が廃止され、「寡婦控除」の範囲が見直され、「ひとり親控除」が創設されました。
※この記事では省略します。
(3) 勤労学生
勤労学生控除を受けるために記載する欄です。
※この記事では省略します。
他の所得者が控除を受ける扶養親族等
一般的には記載しない欄です。
16歳未満の扶養親族
16歳未満の扶養親族は「扶養控除」の対象外ですが、住民税の計算で利用するためあわせて記載します。
- 令和2年分:平成17年1月2日以後生まれ
- 令和3年分:平成18年1月2日以後生まれ
がいる場合に記入します。
特に令和2年中に子どもが生まれた場合、昨年の年末調整で提出した「令和2年分扶養控除申告書」に赤ちゃんのことを書いていないケースがあるので、追加しましょう。
関連 扶養控除申告書の異動月日及び事由とは?書き方の記入例と訂正方法
※「個人番号(マイナンバー)」は、勤め先によって管理が異なるので勤め先の指示に従ってください。
単身児童扶養者【記載不要】
令和2年分の扶養控除申告書から追加された部分でしたが、ひとり親控除ができたことで、令和2年4月1日以後に提出する扶養控除申告書については記載不要となりました。
※令和3年分の扶養控除申告書からは削除されています。
※単身児童扶養者とは、いわゆる「シングルマザー」「シングルファザー」の方のことです。
以上です。
まとめ
この記事では扶養控除申告書の書き方についてご紹介しました。
扶養控除申告書以外の年末調整書類については下記をお読みください。
※年末調整に関するまとめ記事はこちらをお読みください。
※詳しい源泉徴収票の見方は下記の記事で紹介しています。