毎月の給料からは所得税が天引き(=源泉徴収)され、年末になると年末調整が行われます。
なぜこのようなことをするのでしょうか?
この記事では、源泉徴収と年末調整の基礎知識について説明します。
※年末調整に関するまとめ記事はこちらをお読みください。
もくじ
源泉徴収とは?
会社員や公務員など給料や賞与(ボーナス)をもらう方は、毎月の給料や夏・冬の賞与から「所得税」があらかじめ天引きされます。
これが、源泉徴収(げんせんちょうしゅう)です。
勤務先は、源泉徴収した所得税を翌月10日までに税務署に納めています。
そのため、普段、あなた自身が税務署とかかわることはまずありません。
関連 パート・アルバイトの所得税は月の給料がいくらから発生する? 源泉徴収税額表(甲乙欄)の見方
そもそも年末調整とは?
年末調整はなぜ必要
しかし源泉徴収する所得税はざっくり計算した金額です。
しかもちょっと多めに天引きされています。
また、その年に生命保険料や地震保険料を払ったり結婚したりすると、「所得控除」が受けられます。
控除によって税金は安くなるのですが、源泉徴収では反映できません。
だから【年末】に、本来その年に負担すべき所得税をちゃんと計算します。
源泉徴収された所得税との差額が多ければ「還付」、足らなければ「徴収」というように【調整】しているのです。
これが年末調整(ねんまつちょうせい)です。
・・・といっても多くの方にとって年末調整は
- 必要な書類を提出して
- 払いすぎた税金が還付されるのを待つ
だけの手続きといえます。
一方、勤め先は
- 従業員から必要書類を集めて
- 税金の計算をして
- 税務署に納税して
- 税務署や市町村に税金の計算結果を報告して
- 従業員に差額を還付または徴収する
とやることがいっぱいあるため、結構大変です。
しかも平成28年分からマイナンバー(個人番号)制度がスタートして、年末調整はさらに手間が増えています。
本来払うべき所得税が少ない場合=還付!
具体的な金額を使ってもう少し年末調整について見てみましょう。
例えば
- 1年間で源泉徴収した所得税=12万円
- 本来その年に負担すべき所得税=11万円
だとすると、1万円だけ多めに払い過ぎたことになります。
この場合、1万円を還付してもらえます。
これはあくまで自分が払ったお金が戻ってきただけですが、うれしいですよね^^
年末調整は「還付」がいいに決まってます。
関連 源泉徴収税額が「0円」の意味を知ってますか?源泉徴収票の見方
年末調整で「不足」する原因は?
逆に、本来その年に負担すべき所得税が13万円のときもあります。
こういうときは、13万円-12万円=1万円が不足しています。
後日、給料から追加で「徴収」されると、とてもブルーな気持ちになりますね。
なぜこういうことが起こるのでしょうか?
<年末調整で「不足」する主な原因>
- 毎月の給料の変動が大きかった
- 給料に占める賞与の割合が大きかった
- 年の途中で離婚して配偶者控除がなくなった
- 扶養している子どもの情報が間違っていた
- 勤め先が行う毎月の源泉徴収の計算が誤っていた
- 勤め先が行う年末調整の計算が誤っていた
いずれにしても不足しているときは、どうしてそうなったのかを勤め先に聞いて確認しましょう。
関連 年末調整の還付のタイミングと、不足して徴収されるときの理由
関連 年収103万円以下の扶養の範囲で働く人の源泉徴収票の見方
年末調整でできる「控除」は?
控除は税金を減らしてくれるので、控除を漏れなく行うことが「節税」につながります。
給与をもらう人の所得税の計算式は、次のとおりです。
- (給与収入-給与所得控除)-所得控除=A
- (A×税率)-税額控除=所得税
(1) 給与所得控除
まず給与所得控除は給与収入に応じて誰でも受けられるものです(おおよそ次の計算式で求められます)。
<給与所得控除>
給与等の収入金額(A)※ | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
162万5千円以下 | 最低550,000円 | |
162万5千円超 | 180万円以下 | A×40%-10万円 |
180万円超 | 360万円以下 | A×30%+8万円 |
360万円超 | 660円以下 | A×20%+44万円 |
660万円超 | 850万円以下 | A×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
※「源泉徴収票」の「支払金額」と一致します。
例えば年収500万円の場合、給与所得控除額は
- 500万円×20%+44万円=144万円
となります。
(2) 所得控除・税額控除の種類
年末調整でできる所得控除と税額控除の具体例は次のとおりです。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除(例:iDeCo)
- 住宅ローン控除(入居2年目以降)
年末調整でできない「控除」は?
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除(ふるさと納税(※)など)
- 住宅ローン控除(入居1年目)
- 寄附金税額控除
※5か所以下の自治体に寄付をする場合は、確定申告をしなくてもふるさと納税が受けられる「ワンストップ特例」を使えます。この場合は自治体から送られてくる申請書類を翌年1月10日までに提出する必要があるので注意しましょう。
最後に
源泉徴収と年末調整の仕組みが始まったのは第2次世界大戦が終わった昭和22年(1947年)からです。
当時の税務署の職員が足らなかったのが理由でした。
- 従業員:「勤め先」に税金計算をしてもらうため、手間が省ける
- 税務署:「勤め先」が税金を集めるため、税金のとりっぱぐれがない
という2つの大きなメリットがあるため、70年以上続いている仕組みです。
おそらく、これからも続くことでしょう。
実は勤め先というのは税金の計算・申告を代わりにしてくれる税理士のような役割を果たしています。
個人事業者・フリーランスになると自分でやるか、税理士にお金を払ってやってもらうことになります。
そういう意味では、勤め先に年末調整をやってもらうこと自体が、お得ともいえるかもしれません。
・・・ただし、自分の払っている税金についての関心が薄くなってしまうというデメリットもあります。
年末調整が終わったらもらった源泉徴収票をよく見て、正しく税金が計算されているか、控除の漏れがないかを確認しましょう。
関連 年末調整の還付のタイミングと、不足して徴収されるときの理由
※年末調整に関するまとめ記事はこちらをお読みください。
2 件のコメント
もっと基本的な事ですが いつからいつまで働いた収入金額で計算すれば良いのですか?
前年の12月〜11月働いて12月に収入となった分か 実際に1月〜12月まで働いて入金は今年の1月になった分か 、、基本中の基本で恥ずかしいのですが 人によって理解が違いますので 宜しくお願いします。
>足立さん
おはようございます。neronaです。
これは結構知られてないものですが、
答えは「支給日(支給日が決まっていなければま
実際にもらった日)」で全部考えます。
したがって、例えば末締め翌月5日払いで
平成28年12月に働いた給与を今月5日に
もらうケースは、平成29年の計算になります。
根拠として国税庁のページをご紹介しますね。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2668_qa.htm